大井、井川といえば、泣く鉄も黙る鉄ヲタの基本なんだそうです。 私は電車に乗るのが好きじゃないので、あまり縁はありませんでした。 しかし存在自体は知っていましたし、使ったこともあります。 何より日本で唯一SLが毎日走っている所で、行けばSLがあるというかなりトチ狂った所です。 以前の静岡ツーリングでも案の定踏みきりでSLに遭遇しています。 しかし、この大井、井川沿いは風景の変化、ダム、マニアックな鉄道関連、美しい古い町並み等々、かなり見所いっぱいです。 以前行こうとしてあまりの大変さに挫折して逃げ帰ってきましたが(もう20年も前の話)、かなり道路整備が進んで走りやすくなったと聞いています。 今回乗るのはひょんな事からかりたビックスクーター、マジェスティ250。 「あまりの楽さに、車にすら乗る気がなくなる究極の移動手段」とまで言われるこのビックスクーターで、以前エリミネーター250で制覇断念した井川線沿線の旅を敢行してみることにしました。
ご覧のように道がとても綺麗になっています。 休日の朝でもあってか、ガラガラの国道。 小一時間も走れば見晴らし最高。 そしてこのルートの一番の目玉は、大井川沿いを走る大井川鐵道の駅舎。 この周辺は比較的栄えており、駅の利用者も結構いるのですが、このように古き良き駅を大事に保存、活用している「教科書のような田舎」であります。 「おらが村にも都会にまげねえ綺麗なピカピカの駅が欲しいだ。山の向こうの田舎の駅は建て替えられて鉄筋ガラス張りのハイカラな駅になっただ。うちの駅もやっぺよ」 なんて感じの醜い見栄の張り合いによって、日本の田舎の風景は滅茶苦茶にされてしまって見る影も無いところばかりです。 しかしここは違う。 すごいぞ!! 金谷町!!! 今は島田市ですが、島田駅が「隣町との見栄の張り合い」の犠牲にされてますので・・・。 もう沿線の駅やそのまわりはすべて文化財に認定してしまった方が良いんじゃ無かろうか? これほど人口があって、利用者がいて、そしてこの古き良き建造物を守り続けている。 素晴らしすぎる。 そして更に大井川を上っていけば、その風景は更に彩りを増していきます。 お茶畑も沢山。 このあたりは一大お茶産地でもあります。 途中にいくつも集落があるのですが、その雰囲気も見所の一つ。
おまけ トイレ(この左側の小さな木造の建物がトイレですよ)の前にあるのが、今回拝借した新型マジェスティ250。 収納も沢山、運転は実質右手一本だけで、それ以外の三肢は全くやることがないパチンコ状態。 その上驚くことにスマートキー。 新時代の移動手段ですな。 ぱしゃぱしゃ撮っていたら、どっかのお母さんが娘さんを車に乗せてきて、降ろして帰って行きました。 何気なく、この極めて贅沢な空間を日常の物として利用している。 ちょっと移動して隣の駅へ。 この田野口駅は、地元住民が景観保護の活動をしているため、ものすごくコンディションが良い(もとい、他の駅もびっくりするほど綺麗で、どこの駅も地元の方々が素晴らしい遺産の維持のためにがんばっているのが感じ取れます・・・素晴らしい)。 なんでも賞をとったぐらいだそうだ。 そのため、無人駅なのに中はこんなに綺麗。 キッコーエン。 キッコーマン(亀甲萬)じゃなくキッコーエン(亀甲園)。 東北の方にキッコーナン(亀甲南)という味噌と醤油の会社があることは知っていましたが、この亀甲園っちゅうのは知りません。 なんの会社でしょうね? このストーブがまた素晴らしすぎる。 レプリカで良いから、いつか宝くじを当てて自宅&ガレージを手に入れた暁には是非とも欲しい逸品です。 こんな列車も使われています。 しかもお盆前だってのに、結構乗り降りする人がいます。
あっさり千頭駅に到着。ここまでの道はかなり整備が進んで走りやすくなっていました。 バイク乗りにとってはありがたい話ですが、大井川鐵道にとっては「車に客を奪われてしまう」わけでありまして、どこまで喜んで良いのやらという感じなのかも知れません。 もっともローカル線の中ではダントツの人気であり(鉄限定)、赤字の補填を中部電力がしている(大井川鐵道そのものが、元々電力ダム建設のために生まれたこともあるでしょう・・・が、間違いなく中部電力の担当者は鉄ヲタに違いない)、私が生きている間は廃線の心配は無さそうです。 環境のためにも鐵道を利用しましょう。 俺はバイクに乗る。 というわけで千頭駅。 ご覧の通り近年建て替えられてピカピカです。 しかし、落ち着いた配色とデザインが、見事に景色にとけ込んでおり、他の「見栄が全身から滲み出てくるような箱物」のような醜悪さはありません。 大井川鐵道関係者は、景観云々に本当に気を遣ってるんだと感心します。 ここにはSL博物館(自分で動かせるジオラマと、タブレットの機械等が展示されているだけ)やバーベキューレストラン、謎のカレー屋などもあり、ツーリングの休息場所としてはピカイチ。 駅そのものに駐輪場は見あたりませんが、井川線の踏切を越えたところに大きな駐車場がありますのでそこを利用しましょう。 間違えても歩道にバイクで乗り込んで、歩道占領などしないように。 この先は同じ大井川鐵道でも井川線という別の路線になります。 見てください。未だに切符に改札鋏でぱちんとやってくれるんです。 駅は近代化されても改札鋏は廃止しない。 絶対関係者全員鉄ヲタです。 井川線の車両。 ご覧の通り非常に小さい作り。 井川線は元々ダム工事用の(以下略 車両も小さければ車内も小さい。 そしてこのように窓が開く。 私は密閉された空間が大嫌いなので、車はオープン、日常の足はバイク、以前アパート上層階に住んでいた時期は、家も常に窓全開でした。 しかし最近の電車は皆窓が開けられなくなっており、はっきり言って3分中にいるだけで気持ち悪くなってしまい、ほとんど電車に乗れません。 ガキの頃平気で毎日電車通学できていたのは、ボックスシートで自由に窓を全開にできたからかもしれません。 当時は冷房車なんて無かったですからねえ。 安全という言葉の元、どんどん楽しさと心地よさが奪われていく今日この頃・・・。 その横にはこんなものがのほほんと、当たり前のように置いてあります。 わたしには良く分かりませんが、なにかこうメカメカしい感じが素敵です。 横を見ると、先ほど会った車両が駐まっていました。 これもなかなか年代物のようです。 車内も綺麗にレストアしてあります。 すぐに物をぽんぽん捨てる使い捨て社会に背を向ける姿勢が素敵・・・ってそこまで考えて無くて、単に好きなだけなんでしょうけどね。 上流へ更に向かいます。 井川線の車両基地でしょうか? 何とも言えない雰囲気です。
さあ、更に山奥へ。 風情のある鉄橋と、通学路の文字。 この山道を通学するのは大変でしょうなぁ・・・。 その先にも鉄橋が、しかもちょっと珍しい二重の鉄橋です。 しかしやはり鉄橋は良い。 見てくださいよ、この田舎の風景にとけ込んだ素晴らしい橋を。 奥多摩にかけられた某「ベイブリッジやレインボーブリッジみたいなハイカラなブチッヂをおらが村に」的な景観保護観念ゼロの橋と比べてみてください。 なんと美しいことでショーか・・・。 建設された当時は最新技術で、それこそ今で言うレインボーブリッジみたいなもんだったのかもしれませんがね。 時間は最高のアーティストと言われますが、あの某醜悪ブリッジが融け込むようになる日が来るのでしょうか。
線路と比較するとおわかりになると思いますが、井川線のプラットホームはものすごく低いんですよ。 まるでブロック一つ分。 これがまたマニアにはたまらないらしい。 しかし、こんな山奥になんでこんなに沢山お客がいるんでしょうか?? ちょっと不気味です。 そしてお待ちかね。 田舎の川沿いと言ったらダムでしょう。 これは大井川でもかなり有名なダム、長島ダム。 ちなみにこのダムの近所に長島集落という集落があり、ダムの底に沈んでしまったのでちょっとだけ移動して現存しています。 そこは・・・住民のほとんどの姓が「長嶋」さん。長島村の長嶋さん達・・・という漫(略。 そういえば以前私の住んでいた練馬の某田中という所は、土地持ち住人(古くから住んでる住人)の姓がみんな田中・・・。 ダムには駐車場が沢山あり、色々見て回ることができます。 ダム建設により廃棄された旧井川線のトンネルを歩けるようになっているんですが、あまりの姿に・・・とても通れません。 見上げると井川線の車両が、アプト式云々の機関車に押されながらゆっくり通過していきました。 上の写真からも分かるように、ダムのほとりの公園に池があります。 一見日本庭園のようでもあり、まるで日本庭園でない庭。 ん〜微妙。 整備されたばかりなので、今後のバージョンアップに期待です。 そして井川線の代名詞。 大井湖上駅。 水が少ないのが残念ですが、こんな美しい風景が日本にもあったんですよ。 東京からすぐ(大阪、名古屋からもすぐ)の所に・・・。 つうかこの半島の先っちょに駅なんて作ってどうするんだろうと不思議になりますが、結構降りてる人がいました。 一応陸地から歩いていける道が存在するので、この先にある尾盛駅(駅付近に民家も建物も何にもない上に、駅に通じる道自体が全く存在しないという恐ろしい駅)に比べれば存在意義はちゃんとある気がします。 ていうか尾盛駅って・・・。 この次の駅にはちゃんと温泉宿とか民家とか集落とかが存在します。 しかもなんか人が沢山います。 温泉ツアー客のご一行でしょうか? 民家のような駅舎が人であふれかえる姿は面白い。 しかし見てくださいよ、この風景。 ため息が出てきます。 そしてそのままバイクで走ります。 最終目標井川駅。 しかし・・・。 駅の向こう側の道路で崖崩れがあったらしく、私は入ることができませんでした。 残念無念。 ここが一応終着駅なんですが、線路は続いています・・・。 あのトンネルを抜けると・・・一体どんな異次元世界が広がってるんでしょうか・・・。 これを見るためだけに来る価値がある!!! ・・・かもしれない・・・。 その先にあるのは井川湖。 駅から井川ダムは目と鼻の先なのですが、先ほど述べた土砂崩れのため、かなり迂回する必要があります。 この日はトレーラー引いたアメ車のオートキャンパー集団(こんなド田舎にそんなばかでかい車で・・・ンモー)がある意味目立っておりました。 本来ならこの先にある井川大橋(下が木の吊り橋なのに、2トン以下の乗用車が通行可能という恐ろしい吊り橋)や、更に上流の畑薙第一ダム(落差世界一だとか)に行くべきなのでしょうが・・・時間的に心配だったので、ダム上の道を通って静岡へ。 以前紹介した某ダムは歩くことしかできませんが、ここは車のすれ違い通行が可能です。
ところが、井川湖〜静岡市街ルートが大変。 金谷ルートと違って、これといった見所があるでも無し。 まあ綺麗な沢と、落ちてきた巨大な岩の割れ目から水が噴き出している所は目を奪われましたが、それ以外は何もない山道を淡々と、それこそ精神修行のように淡々と。 写真では小さく見えますが、この岩がけっこうばかでかくて、大迫力。 時間単位の精神修行の果てに、見慣れた牛妻の風景が見えたときの感動はひとしおだったのでありました。
せっかくですので、締めに大井川河口を目指しましょうか。 そのまま静岡市内を通過して、安倍川の鉄橋を渡ります。 この鉄橋も良い味を出しています。 ついでに東海道線静岡近辺最後の良心、用宗駅へ。 ここだけは建て替えないでおくれ。 そして海岸線から焼津を目指します。 かつおで有名な焼津港周辺道路を、大井川河口目指して走ります。 この辺は松林が沢山現存しており、昔の東海道の面影を感じさせてくれる、おすすめのツーリングコースです。 そして遂に大井川河口へ。 あのダムの水が、長い道のりを経てこのような流れになって駿河湾から太平洋へ・・・。
途中で1時間の休憩を入れた物の、結局10時間ほどバイクで山道を走り続けました。 さすがはビクスク。 疲労感はほとんどありません。 たしかにバイクのような楽しさは少ないですが、体むき出しの分、それなりに楽しく走る事ができました。 よーし、下見はOK。 今度はバイクできて、存分に楽しむぞー。 だけど井川から静岡に抜けるのはもうやめておこう・・・。
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