四気筒ニ非ズハ日本車ニ非ズ!!

日本の公道を走るために

日本の公道を合法的に走るため には、車両にナンバーが付いている事が第一条件です。
自前のバイクから外して天ぷらナンバーってのが、一部でデフォらしいんですが、いつのまにかネクタイ締めてホワイトカラーになって役職までくっつけられちゃった身としては、そんなことは到底出来ません。
合法的に、この車両にナンバーを付けます!
そのナンバーを付けるために必要な物。
登録です。
登録のためには車検を取らなくてはなりません。
そしてこの手の正体不明なバイクを新規に車検を取るためには、予備検を通さなくてはなりません。
それには「入管証明書」と「ピンクスリップ」が必要で、バイク自体もピンクスリップの年式に合わせた合法化カスタムが必要になります。
例えばこのバイクは70年代なので、ウインカーや消音器は付いていなくてはなりません。
ですが、現代のバイクと違い、消音器は付いていて後方を向いていればかまわないので音量や排ガスのことは一切考えなくても大丈夫。
もっと古いバイクになると、消音器が無くてもよくなり、さらにはウインカーも必要なくなります。
しかし新しいバイクだと、音量も規制音量で無くてはならず、排ガス検査もあるので、キャブは事実上新しいバイクには使えません。

とまあそんなわけで、予備検を通すために保安部品を取り付けます。
フロントブレーキ(長いチョッパーは急ブレーキかけるとフォークが折れちゃうので付けない奴も多いんですけど)、リアの反射板、ウインカー、ミラーを装着。
フロントのスプリンガーは突起物になりえるので、フロント周り一式をスポーツスターにスワップ。
ハンドルロックを溶接して付け(スプリンガーが駄目になったら、スポーツスターのテレスコにスワップをできるようにという考えもある)、ヘッドライトもホンダX4のマルチリフレクターを無理矢理付け。
これで間違いなく予備検はクリアできる!
そう思ったのだが…その前に恐ろしい難関が待ち受けていたのだった…。

係官「これは何処の国のどのメーカーが 製造したバイクですか?」
我々「アメリカのRECOというメーカーです」
係官「知りませんねえ」
我々「私も知りません」
係官「ホームページとかカタログとかありますか?」
我々「ありません。70年代のメーカーで現存してないみたいですし」
係官「困りましたねー、架空のメーカーでは登録できないんです」
我々「架空ではないでしょう?ちゃんとピンクスリップも用意してますし」
係官「それだけじゃ駄目なんです。ちゃんとメーカーがあって、この車両がそのメーカーによって作られた製品かどうかの証拠が必要なんです」
我々「じゃあどうすればいいんですか?」
係官「そのメーカーの担当者と連絡をとって、これがその会社の製品である証拠書類、まあカタログでも良いですよ、それを用意してください」
我々「だから70年代の小さいメーカーで現存してないんですよ。会社が残ってないです(そもそも70年代ってのは、個人レベルでバイクを作るのが当然の時代だっ たので、RECOというのはメーカー名じゃなくて作った奴の名前かもしれない)」
係官「それじゃむりですよ。架空のメーカーじゃ…」
我々「架空じゃないですよ。だからピンスリ見てくださいよ、実際に、リアルにアメリカを走っていた証明ですよ?」
係官「そうは言われても…」
我々「じゃあどうすればいいんですか?」
係官「さあ…」
我々「この、アメリカを走っていたバイクが、日本で走れるように、日本の法律に合わせて修理をしたのに、ゴミにして捨てろってんですか!?」
係官「う~ん…ちょっとわかりません」
しょうがないのでいったん戻り、RECOの資料集めに注力する事に。
あらゆるショップに聞きました。
雑誌関係者にも聞きました。
アメリカの関係者にも人づてに聞いてみた。
しかし、やっぱりRECOなんて出てこない。
しょうがないので、その話を手に車検場へ。
やっぱり同じ押し問答。
使われたパーツのメーカー等、集めた資料を束にして渡した。
でも登録させてくれない。
それを一年近く繰り返し。
ただ繰り返すのでは無く、色々と手も尽くしました。
途中でもう駄目か、東南アジアにでも輸出するしかないか…とまで思いましたが、バイク屋さんの地道な努力によって

遂に生産メーカー不明で受け付けてくれる事に!!

やったー!!
保安部品は完璧にやっておいたので、書類が通ればあとはとんとん拍子。
あっというまに車検も取れてしまいました。

フロント周りをスプリンガーに戻し(次の車検はスプリンガーでうまく通してみる)、スプリンガーにディスクブレーキを取り付け、そのまんま納車…とはいかないのが、この手の古いバイクの悲しい所。
費用がキツキツになっちゃったので、無理矢理納車してもらって自分でコツコツ直していきます。

うまくいかないというのは… オーバーフローがものすごい。
ひたすらガソリンがちょびちょび漏れる。
家に持ち帰って、ペットボトルで各キャブからの漏れ量を確認。

一晩でだいたいこれくらい漏れる


左の二つからフローする。

左の二つのキャブから主に漏れてくる。
フロートバルブを清掃するが、やっぱりちょろちょろと漏れてくる。
フロートレベルが高すぎるのかもしれない。
フロートをよく見てみると、バルブを押すでっぱりが邪魔して、バルブを押し切れていない可能性がある。


バルブを押す部分を曲げてみる。

しかし効果無し。
次にダメ元で、ガソリンホースの間に挟んでるフューエルフィルターを、もっと集塵効果が高い物と交換してみた。

ばっちり。
タンク内にある、安いフィルターも通り抜けるような小さいダストが、フロートバルブに引っかかってフローさせていた模様。
しかしこれで終わりではない。
フューエルコックをオフにしてもガソリンが出てくる。
コックがもう駄目みたい。

このコックがもう駄目っぽい。

だけど交換しようにも、タンク本体がメスネジのコックなんてなぁ。
どうせネジのピッチもインチ規格で、そうそう手に入らないだろうなぁ。
と思ってドラッグスペシャリティーズのオールドブックを眺めていたら…
あった。
パウコのコックだったのか。
ってことは、パウコのマスタングタンクだったのかな?
ガッツクロームにあっさり在庫があり、その日のうちに交換作業突入。
コックの劣化よりも、汚い溶接が怖い…。
ちゃんと漏れテストやって合格してるんだろうなぁ…。

40年の時を経て、新品で手に入っちゃうアメリカ製品の素晴らしさ。
なんでもすぐ捨てちゃう、辞めちゃう、消し去っちゃう日本の寂しさ。

タンクとコックの間にアダプターがあり、このアダプターは再利用できるので、丁寧に外す。

新品にシールテープを巻き…。

アダプターとコック本体を、丁度良い向きになるよう、調整しながら閉め込んでいく。

よし、ばっちり。

ガスホースは無色透明か赤系が欲しかったのですが、店頭には置いて無く、とりあえずで青いホースで…。
なんとなくワンポイントにもなってるんじゃないかと…。
しかし装着してみると、サイズが微妙に大きい。
かといって6ミリだと小さすぎる…。
フューエルホースの規格って日米で違うのだろうか…。
タイラップやホースバンドでギチギチに締め上げて対処。
遺物噛み込みによるフロー防止にフィルターも装着。

う~ん、なんか浮いてるかなぁ
クリアーで、ちゃんと繊維の補強が入ってて…っていうホースが欲しいなぁ

よーし、今度は漏れてこない。
コックをオンにしてみても大丈夫だった。
フローのそもそもの原因は、オーソドックスにタンクの錆びによるものだった模様。
これで安心して置いておけます。

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